漬け物のお話し
ごきげんようスマイリー平野です。
いつも、笑顔会ブログをご覧いただきありがとうございます。
10月30日ごろは、七十二候「こさめ ときどきふる」です。晩秋から初冬にかけて一時的に降ったり止んだりする小雨を「時雨」(しぐれ)と言います。この時季は一雨一度という言葉もあって、秋は雨が降るごとに気温が1度下がるという意味です。時雨が冬の到来を知らせてくれています。
今週は「漬け物」についてお話させていただきます。
2016年に総務省の家計調査では、都道府県別漬物消費量ランキングで、最も消費量が多いのは10,357円の京都府でした。全国平均は6,717円で1.5倍も消費しており、2位の宮城県の8,556円を1.2倍です。しば漬、千枚漬などの京漬物が有名な京都府らしいデータですね。1位の京都府からは、宮城県、山形県、岩手県、福島県と東北地方が上位を占めています。因みに、奈良漬が有名な奈良県が第6位で8,185円、泉州水ナスが特産の大阪府が21位で6,773円、ひの菜漬、養肝漬で有名な三重県は31位の5,950円でした。東北地方が多いのは、冬の保存食の名残とも思われます。
さて、日本人は縄文時代から塩漬けによる野菜などの保存を行っていました。記録に残されたものでは、奈良時代の平城宮から漬け物のことを書かれた木簡が発掘されています。
漬け物には日本人の知恵が数多く盛り込まれています。先ずは、糠漬けに使う「糠」はビタミンB群の宝庫で脚気や体力の衰え、疲労といったB群欠乏症の予防効果があります。
さらに、漬け物が、腸内で体に良い働きをする微生物、とりわけ乳酸菌を増やすことに大いに役立つことを体験的に知っていました。野菜には、もともと乳酸菌が付いていますが、これを漬け物にすると、食塩に対して抵抗力の強い乳酸菌は漬け床で盛んに繁殖します。漬け物を食べることにより腸内で乳酸菌が活発に増殖して、腐敗菌や異常発酵菌などが腸内に侵入しても、その増殖を抑えることができるようになります。また、有益な乳酸菌が多種のビタミンを合成するので体の働きのために役立つことになります。昔の人は、二日に一度ぐらい漬け床をぬるま湯に溶いて飲んでいました。現代人がヨーグルトなどの乳酸菌飲料を飲むのと同じ効果を知っていたようですね。
次に、「梅干し」ですが糠漬けと同じように発酵食品と思われがちですが、無発酵食品に分類されます。梅干しは漬ける塩分濃度が12%以上と濃く、梅本体に浸み込んで水分を抜いてしまうため、発酵に必要な酵母・乳酸菌などの微生物が生きられない環境になります。
さらに、梅には殺菌・除菌効果の高いクエン酸が多く含まれているため、より微生物が入り込みにくい環境で発酵作用がおこりません。
梅干しが初めて記録に登場するのは、平安時代中期で日本最古の医学書「医心方」に効用について記述があり、薬用として梅干しが紹介されています。また、清少納言が梅干しを食べてすっぱい顔をする老婆のことを「枕草子」に書いています。
戦国時代は、食べるだけでなく飲料水や傷口の消毒に使われたり、見るだけで唾液分泌が促進されて喉の渇きを癒し息切れを防ぐ効果があるので、出陣に際しての必需品として武将や兵が携帯していました。
江戸時代になると一般庶民にも広まり、熱いお茶を注いだ「福茶」を大晦日や節分に飲んだり、黒豆と梅干しで「喰い積み」というおせちを作ったりしていました。
明治時代では、コレラが発生した際に梅干しの殺菌力が見直され需要が急増しました。さらに、日清・日露戦争では戦地で伝染病に対する薬効や疲労回復効果などが認められ兵糧食として採用されました。
野菜や果物を原料にした漬け物生産額では、高級品「紀州南高梅」で知られる和歌山県が全国1位の477億円(シェア14.5%)2位の栃木県237億円(7.2%)とダントツのトップに君臨しています。「南高梅」の梅干しは、梅の酸味とハチミツの甘味と塩味と紫蘇の香りが絶妙で一粒数百円という高級品もあります。すぐに食べるのが勿体ないので眺めるだけでも口の中がジワっと潤い戦国武将になったような気分を感じることが出来ますね。
医食同源という言葉どおり、漬け物はお薬の効果がありますね。キムチやザーサイもいいかもしれませんが、世界遺産の和食を見直して全国各地の漬け物とご飯のマリアージュ(相性)を楽しんでみては如何でしょうか。「いぶりがっこ」でお茶漬けが美味しかったです。
では、ごきげんようさようなら。