本当にあった食べものと命のお話 2
ごきげんよう!スマイリー平野😊です。
いつも、笑顔会ブログをご覧いただきありがとうございます。
今週も「読む 知る 話す ほんとうにあった食べものと命のお話 講談社」から引用したお話を書かせていただきます。
毎日、朝ご飯はちゃんと食べていますか? 私たちは、昼はたくさん体を動かして力を使い、夜は体を休めて眠ります。しかし、脳は夜も眠っていないのです。朝起きてすぐは、少し頭がぼーっとしますよね。それは夜の間、働き続けた脳が、おなかをすかせているからです。朝ご飯を食べると栄養が行き、脳と体がしっかりと目覚めます。その為、朝から集中することができます。反対に、朝ご飯を食べないで学校や職場に行ったら大変です。頭がぼんやりして思うように力が出ません。人間の体温は、夜寝ている時は低くなりますが、朝ご飯を食べることで、上げることが出来ます。朝ご飯は、1日を始めるスイッチとなり生活リズムを整えてくれます。健康に暮らし続けるために欠かせないものです。
はなちゃんのみそ汁(食べることは生きること) こすぎさなえ・文
トン、トン、トン。
朝6時。安武(やすたけ)家の台所で、ゆっくりと包丁を動かす音が聞こえてきます。小さな手で包丁を握っているのは、5才のはなちゃんです。みそ汁に入れる大根を切っています。「はな、あせらなくていいから気をつけてな。」隣に立っているお父さんが、声をかけます。
今日のみそ汁の具は、大根とニンジンと里芋です。ガスの火をつけ、かつおだしをはったお鍋の中に具を入れます。具がにえたら火を止めて、みそをときいれます。みそ汁に、ご飯と納豆で、いつもの朝ご飯の出来上がりです。はなちゃんとお父さんは、「いただきます。」手を合わせました。
みそ汁の作り方を教えてくれたのは、お母さんです。はなちゃんは、厳しいけれど、おもしろくて、歌が上手なお母さんのことが、大好きでした。お母さんは、はなちゃんが保育園に行くときも、お風呂に入っているときも、夜寝る前も、はなちゃんのことを「大好きだよ。」と言ってぎゅーと抱きしめてくれました。じつは、お母さんは重い病気を治すために、早寝早起きをして、体によい食べものをえらんで食べていました。「食べることは生きること。ご飯とみそ汁は、元気をくれるんだよ。というのがお母さんの口ぐせでした。はなちゃんは、お母さんと同じものを食べていたので、いつも元気いっぱい、風邪をひいたこともありません。お母さんの病気もきっとよくなると、はなちゃんは信じていました。
はなちゃんが4才になったとき、お母さんから、誕生日プレゼントにお揃いの柄の、エプロンと三角巾をもらいました。お母さんははなちゃんのエプロンのひもを結びながら言いました。「食べるものを作れるようになることは、生きるうえで一番大事なことよ。明日からママが、お料理教えてあげるね。」
4才のはなちゃんのお手伝いは、ショウガや大根をすりおろすことでした。お米のとぎ方も教わりました。「お米ひとつぶの中には7人の神様がいるんだよ。」はなちゃんは、7人の神様のすがたを思いうかべながら丁寧にお米をとぎました。はなちゃんは5才になると、お母さんが言いました。「これからは、はなちゃん1人で朝のみそ汁を作るのよ。」次の日からは、はなちゃんは、朝6時に起きて台所のふみ台に立ちました。お母さんがそばで教えてくれます。はじめは、鍋に水と昆布を入れ、沸騰する直前に弱火にして昆布だしを取りました。
だしを取っている間に、包丁で具を切っておきます。「包丁を持たないほうの手はネコの手だよ。指を出すと危ないからね。」具を切り終わったら、鍋から昆布を取り出して、火を強め、かつおだしを一掴み入れます。鍋の中がぶわーっとなったら、ゆっくりとひと呼吸して火を止めます。「かつおぶしがしずんだら、ザルとボウルでおだしを濾すのよ。お湯が熱いから気をつけてね。」「みその分量は、自分で味見をして調整してごらん。」お母さんは、時間がかかっても一切手を出さず、全部はなちゃん一人でやらせました。
失敗することもありましたが、お母さんもお父さんも、はなちゃんが作ったみそ汁を「美味しい、美味しい。」と言って食べてくれました。それがうれしくて、はなちゃんは毎日がんばりました。お母さんは料理以外の家事も教えてくれました。洗濯物干し、洗濯物たたみ、お風呂掃除、靴ならべ、保育園の準備、タンスの整理…。「はなちゃんには、身の回りのことができるようになってほしいの。」お母さんは、はなちゃんに何度も言いきかせました。もしかしたら、自分の命がそう長くないことに気づいていたのかも知れません。
病気のせいで、お母さんの体は日に日に弱っていきました。それでもお母さんは、はなちゃんやお父さんの前では冗談を言って笑わせてくれました。「ママの病気が治りますように。」はなちゃんは一生懸命いのりましたが、願いは叶いませんでした。お母さんは、5才のはなちゃんを残して、33才でこの世を去ったのです。はなちゃんのおうちは、悲しみにつつまれました。
しばらくしたある日のこと。はなちゃんは、すっかり落ち込んでしまったお父さんに言いました。「パパ、元気を出して。今日から、はなが朝のみそ汁を作るよ。ママとの約束だからね。」その日から、はなちゃんのみそ汁作りが再開しました。お母さんの代わりに、隣に立つのは、お父さんです。「パパ、ご飯とみそ汁は元気のもとだよ。」前向きなはなちゃんを見てお父さんにも笑顔が戻りました。はなちゃんは、お父さんと助け合いながら、力強く生きています。
梅の花が各地でチラホラ咲き始めましたが、突然に寒い日が戻る余寒の頃です。朝ご飯をしっかり食べて元気に春を迎えましょう。
それでは、ごきげんよう。