食で応援! 運動能力アップごはん 第5回 エネルギーを生む栄養素 ~脂質~

運動に取り組むお子さんをサポートするための、栄養やおすすめレシピをご紹介する連載です。

第5回のテーマは脂質。

運動に取り組むお子さんにとって、脂質が必要な栄養素である理由や、上手に栄養を取り入れられるレシピをご紹介します。

監修:中江祥子(管理栄養士)

脂質は体に悪い? 必要?

脂質は、肥満の原因となることなどから「脂質=悪いもの」というイメージがありますが、糖質・たんぱく質と並ぶ三大栄養素のひとつで、体に必要な栄養素です。

運動をしているお子さんは、より多くのエネルギーを使います。

運動で消費するエネルギーは、糖質だけでなく、脂質を使うと効果的です。

脂質は、脂質1gで9kcalのエネルギーを産み出すことができる効率の良いエネルギー源。

体内で余った脂質は体脂肪として蓄えられ、貯蔵エネルギーとして運動時などに利用されます。

とくに軽い運動や、マラソンなどの長時間の運動でエネルギー源となります。

また脂質には、体温を保持する効果や、細胞膜やホルモンの構成成分となる役割、脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)の吸収を助ける働きもあります。

摂取量が少なすぎると、体に悪影響を及ぼし、ケガにつながる恐れがあります。

ただ、偏った食生活でない限り、脂質は不足することのあまりない栄養素です。

運動する人にとって体脂肪は、パフォーマンスの低下につながる可能性もあるので、摂りすぎにも注意が必要です。

脂質 食べ方のポイント

脂質の多い肉 少ない肉

豚肉、牛肉、鶏肉などさまざまな種類の肉がありますが、種類だけでなく部位によっても脂質の量は違います。

脂質の量を気にしながら、調理する肉を選びましょう。

豚肉

牛肉

鶏肉

脂質の摂取を抑えたい場合は、脂身を取り除いたり、赤身の多い肉を選びましょう。

鶏肉は皮を取り除くことで脂質の量を30%ほどに抑えることができます。

体にいい油って何??

「EPAやDHAは血液をサラサラにする」「オリーブオイルは悪玉コレステロールを抑制する」など、“体にいい油”があると言われています。

油にはさまざまな種類があり、種類によって性質も異なります。

「いい油」や「悪い油」と言われる理由には、脂質の構成成分である「脂肪酸」が関係しています。

常温に置いていると、肉の脂肪やバターなどの油脂は固形で、植物油などの油脂は液体ですね。これは、脂肪酸の種類と性質が違うからです。

脂肪酸は「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分けられます。

一般的に動物性油脂に含まれるのは「飽和脂肪酸」、植物性油脂に含まれるのが「不飽和脂肪酸」です。

「いい油」と言われているのは、主に「不飽和脂肪酸」です。

(「いい油」といっても、たくさん摂ってもいいわけではありません)

飽和脂肪酸

肉の脂身やバターなど 常温で固体の油脂に多く含まれています。

主にエネルギー源となりますが、摂りすぎると、中性脂肪や悪玉コレステロールが増加するので、摂りすぎには注意が必要です

不飽和脂肪酸

植物性の油脂や魚油に常温で液体のものに多く含まれています。

エネルギーとなるだけでなく、さまざまな機能があることが特徴です。

なかでもEPA(エイコサペンタエン酸)は、血栓を防ぎ血流をよくする効果があります。

血流が良くなることで酸素が体にいきわたり、疲労が軽減されます。持久力が必要な運動をするお子さんは、積極的にとることをおすすめします。

必須脂肪酸とは?

脂肪酸のうち、体内で合成できなかったり、できても量が十分でないものを「必須脂肪酸」といいます。

これらの脂肪酸は酸化すると質が低下するので、酸化を防止する働きのあるビタミンA・C・Eと合わせて摂ることがおすすめです

「不飽和脂肪酸」のうち、「リノール酸」「α-リノレン酸」「アラキドン酸」と呼ばれるものが「必須脂肪酸」で、食品から摂取する必要があります。

脂肪酸の種類
★:必須脂肪酸
働き多く含まれている食品
オレイン酸悪玉コレステロールや血中中性脂肪の増加を抑える働きオリーブオイル、紅花油
リノール酸 ★血中コレステロールを減らす働きがありますが、摂りすぎると、善玉コレステロールも減少させる可能性があります大豆油、コーン油、綿実湯、ごま油、ヒマワリ油
アラキドン酸 ★さまざまなホルモン様物質の材料になりますレバー、卵
α-リノレン酸 ★心臓血管系疾患の予防や改善効果がありますえごま油、亜麻仁油
EPA(エイコサペンタエン酸)血中の中性脂肪を減らし、動脈硬化などを予防する効果があります。また、血栓ができるのを防ぎます青背魚
DHA(ドコサヘキサエン酸)血管系の病気の予防脳や神経の機能を向上します青背魚

健康効果があり、必須脂肪酸が含まれている不飽和脂肪酸を心がけて摂るようにしましょう。


Point

・脂質は少ない量で多くのエネルギーを産み出すことができる

・運動時にエネルギーとして利用される

・摂りすぎには注意が必要で、肉の部位や脂質の質にも気をつける


おすすめレシピ

オレイン酸+ビタミンA・ビタミンE】

ナッツのにんじんしりしりレモンオリーブオイル風味

<材料(3人分)>

にんじん 大1本
ピーマン 2個
食塩 少々
オリーブオイル 大さじ1
レモン果汁 大さじ2
アーモンド 9g

<栄養価(1人分)>

エネルギー 94kcal/たんぱく質 1.2g/脂質 5.8g/食塩 0.3g/ビタミンA 568μgRAE/ビタミンE 3.9mg

※詳しい作り方やポイントは、こちらで紹介しています。

https://cookpad.com/recipe/6850613

【EPA・DHA+ビタミンC】

キャベツとブロッコリーの鯖缶和え

<材料(3人分)>

キャベツ 90g
ブロッコリー 60g
にんじん 30g
鯖缶(水煮) 45g

<栄養価(1人分)>

エネルギー 64kcal/たんぱく質 4.8g/脂質 3.6g/食塩 0.2g/ビタミンC 37㎎

<作り方>

①キャベツは短冊切りに、にんじんはいちょう切り、ブロッコリーは一口大に切る。

②野菜を茹でるか、電子レンジで蒸す。

③②と鯖缶を和える。

<ポイント>

・鯖缶には健康効果が言われているDHAやEPAが豊富に含まれています。
・キャベツやブロッコリーに豊富なビタミンCは脂質の酸化を予防し、脂質の質を保つ効果があります。
・キャベツとブロッコリーを茹でる際は、ビタミンの損失を防ぐためにさっと茹でましょう。

【リノール酸+ビタミンC+ビタミンA】

雷汁風

<材料(3人分)>

木綿豆腐 75g
ごま油 適量
じゃがいも 小1個
にんじん 15g
オクラ 2本
塩 少々
しょうゆ 小さじ3/4
酒 小さじ3/4
昆布だし 450g

<栄養価(1人分)>

エネルギー 74kcal/たんぱく質 2.3g/脂質 4.1g/食塩 1.3g

<作り方>

①じゃがいも、人参はいちょう切り、オクラは輪切り、豆腐は賽の目切りにする。

②鍋にごま油を熱し、木綿豆腐を炒める。

③だしを入れて人参、じゃがいもを煮る。

④野菜が柔らかくなったらオクラを入れ、調味する。

※詳しい作り方やポイントは、こちらで紹介しています。

https://cookpad.com/recipe/6850622