お酒がお酢になるお話
ごきげんようスマイリー平野です。
いつも笑顔会ブログをご覧いただきありがとうございます。
11月22日は、二十四節気の小雪(しょうせつ)です。寒さが増し、雨がそろそろ雪に変り始め、冬がいっそう深まります。しかし、まだ冬本番には及ばす、平地に雪が降り積もるのはもう少し先となります。旧暦では小雪の時期にあたる10月を「小春」と呼んでいました。ふと訪れる春のように暖かい日を「小春日和」(こはるびより)と言います。先週の日中は暖かく、まさしく小春日和でしたね。
さて、今週は「お酢」についてお話をさせていただきます。人類は有史以前からお酒を造っていました。米や麦などの穀物やブドウなどの果実を原料に、より美味しい酒を造る為に膨大な時間と労力を費やしてきました。しかし、せっかく造ったお酒がいつの間にか酸っぱくなって飲めなくなることも珍しくありませんでした。英語でビネガー(VINEGAR)、フランス語でビネグル(VINAIGRE)と言います。語源は「酸っぱいワイン」です。食酢が古くなったワインから生まれたことを示しています。漢字でも「酢」の部首の「酉」(とりへん)は、酒を入れる器の形を描いた象形文字で、一方の「乍」という字は、木の枝をまげて垣根などを作る様子を示す漢字で、転じて「過ぎ去った月日、昔」を意味しています。
洋の東西でお酒から造られるものがビネガー・お酢の語源になっていますね。
すこし、難しくなりますがお酢になるまでの発酵についてお話をいたします。一番単純なワインを原料にしたビネガーで説明します。ブドウ果実を原料にして造られるワインは、ブドウ果汁に含まれる糖分を酵母の働きで、アルコールと炭酸ガスに分解してお酒にすることをアルコール発酵と言います。そして、ワインに含まれるアルコールを酢酸菌が酢酸に変換することを酢酸発酵と言います。
果実の場合は、果汁に糖分が含まれているので単純に酵母がアルコール発酵することが出来ますが、米や麦などの穀類を原料とする場合は、アルコール発酵の前にデンプンを糖化する工程が必要になります。ビールの場合は大麦を発芽させた麦芽に含まれる酵素(アミラーゼ)を利用して甘い麦汁を造ります。日本酒の醸造では、蒸米に麹菌を増殖させ、清酒酵母とともに仕込んで「もろみ」を造ります。もろみの中では麹菌が残したアミラーゼが蒸米のデンプンを糖分に分解し、同時に清酒酵母が糖分をアルコールに転換します。
ビールの場合は糖化の行程が完了してからアルコール発酵を開始するので、単行複発酵と言い、日本酒の場合は糖化の行程とアルコール発酵の行程が同時進行することから並行複発酵と言います。さまざまな醸造方式で造られたお酒は、洋の東西を問わず古来より人々に酔い心地と幸福感をプレゼントするとともに、一部は食酢となって食卓を彩ってきました。ワインから造るとワインビネガー、ビールを原料とする麦芽から造るとモルト酢(麦芽酢)、清酒から造ると米酢になります。現在では飲用のお酒を食酢製造に用いるわけではなく、最初から食酢製造用に原料を処理されていますが、アルコール発酵の段階までの基本的な造り方は変わっていません。
もう少し詳しく、食酢の種類を紹介します。
①米酢・穀物酢
米酢は米を原料とした日本特有の醸造酢です。透明度が高く微かに黄金色がかっており、ほんのり甘く、コクのある旨みとまろやかな味わい、スッキリした香りが特徴です。寿司などの和食に良く調和し、酢の物や酢味噌など酢の味と香りを楽しむ料理に適しています。
ただし、酢酸は揮発しやすいので、加熱する料理では米酢の香りが飛んでしまいます。
②リンゴ酢
果実酢のうち、とくにリンゴ果汁を原料とするものはリンゴ酢、ブドウ果汁を原料とするものはブドウ酢と規定されています。透明で黄色味がかったリンゴ酢は、日本では甘く完熟したリンゴを原料とし、酵素剤を使用してリンゴの上品な香りと、リンゴ酸などのため酸味が和らげられることからドレッシングやソースの材料として重宝します。
③米黒酢
通常の米酢は精米を原料とするが、黒酢は玄米を原料として時間をかけじっくりと発酵
・熟成させて造られます。鹿児島県霧島市福山町周辺では、壺を用いての独自の製法により黒褐色で、まろやか口あたりで健康飲料として直接飲用することもできる福山黒酢とよばれるものがあります。
④ワインビネガー
ワインを酢酸発酵させて造るワインビネガーは、日本ではブドウ酢に分類されます。原料のブドウにより赤ワインビネガーと白ワインビネガーがあります。渋味のある赤ワインビネガーは肉の煮込み料理などに旨味とコクを引き立たせます。また、白ワインビネガーは渋味が少なくスッキリした味わいから、ドレッシングやマリネの調味料として適しています。
⑤バルサミコ酢
近年、急速に販売拡大されて世界中で注目を浴びるイタリア特産のワインビネガーです。
イタリアの法律で厳しく製法が規定されており、使用するブドウ産地、品種や木樽での熟成期間によってワインと同様に格付けがされています。「バルサミコ」はイタリア語で「芳香がある」という意味で、豊かな香りとまろやかな甘味と穏やかな酸味が複雑ながらも絶妙なバランスの逸品です。高級格付けワインのように、数十年の熟成で100mlが何万円もする超高級品もあります。
お酢には、昔から殺菌効果があると言われています。さらに、腐敗防止効果もある健康的な調味料です。上手に料理に使えば健康増進がはかれますね。
それでは、ごきげんようさようなら。